茨木酒造「来楽」の現在地|江戸創業の名門が花酵母で魅せる味の真相
兵庫県明石市魚住町。播磨灘の潮風と肥沃な田園が交差するこの地に、江戸時代末期の1848年(嘉永元年)から暖簾を掲げる蔵元が「茨木酒造合名会社」です。日本を代表する酒米「山田錦」の主産地である播州・明石の地で、小規模だからこそ可能な徹底した手造り製法を貫いてきました。その代表銘柄である「来楽(らいらく)」は、確かな酒質設計と独創的なアプローチによって、近年日本酒愛好家や全国の酒販店バイヤーから熱い視線を浴びています。
なかでも酒造業界の注目を一気に集めたのが、花から分離された酵母を用いる「花酵母仕込み」への挑戦です。伝統的な清酒酵母の枠組みにとどまらず、アベリアやナデシコといった自然の花酵母を巧みに操り、現代の食卓に寄り添う新たな香味の地平を切り拓いてきました。170年を超える歴史を紡ぎながら、常に進化を止めない明石の銘名門・茨木酒造。その酒造りのこだわりと、気になる味わいの真相に迫ります。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:1848年創業の茨木酒造は、9代目蔵元杜氏が率いる伝統の完全手造りと革新的な「花酵母仕込み」で高い評価を獲得。
- 要点2:銘酒「来楽」は、明石の海の幸を引き立てる透明感のあるキレと、花酵母由来の上品で華やかな香味が絶妙に調和。
- 要点3:毎年春に大盛況となる蔵開きや直営販売に加え、全国の地酒特約店やオンラインでも確固たるファン層を拡大中。
【なぜ今話題なのか】江戸創業の名門・茨木酒造「来楽」が日本酒ファンを惹きつける理由
銘柄名である「来楽」の起源は、古代中国の思想家・孔子の言葉を編纂した『論語』の冒頭、「朋あり遠方より来る、また楽しからずや」に由来します。「遠方から友が訪ねてきて酒を酌み交わす時間は、この上なく楽しいものである。この酒を酌み交わすことで人生を豊かに楽しんでほしい」という蔵元の願いが込められています。
日本酒ファンの間で茨木酒造が今改めて話題となっている背景には、大量生産の対極にある「手造り少量仕込みへの回帰」と「食との親和性を極めた酒質設計」があります。かつて灘や西灘エリアの蔵元が機械化と大量生産へと舵を切った時代にも、茨木酒造は木製の甑(こしき)による蒸米や、麹蓋(こうじぶた)を使った緻密な製麹といった手作業の工程を頑なに守り続けてきました。
蔵元杜氏を務める9代目・茨木幹人氏が打ち出す味わいは、奇をてらった派手さではなく、米の旨味を芯に残しながらも後口が驚くほど軽やかに切れていくのが特徴です。全国の酒蔵を取材する専門ライターや地酒専門店の関係者からも、「明石のタコや鯛といった繊細な魚介の風味を一切邪魔せず、むしろ素材の甘みを引き出してくれる」と高く評価されています。地元に根ざした晩酌酒の原点を守りつつ、現代の洗練されたダイニングシーンでも映える酒質を実現している点こそ、目の肥えた日本酒ファンを惹きつけてやまない理由です。

【味わい徹底解剖】伝統の手造り製法と注目の「花酵母」仕込みが生む真価
茨木酒造のアイデンティティを語る上で欠かせないのが、東京農業大学醸造学科で開発された「花酵母」の積極的な活用です。清酒の醸造には古くから日本醸造協会が頒布する「きょうかい酵母(7号酵母、9号酵母など)」が広く用いられてきましたが、茨木杜氏は母校でもある東京農大が野生の花々から分離・培養に成功した花酵母の可能性にいち早く着目しました。
茨木酒造が主に手掛けているのは、以下のような自然由来の花酵母です。
・アベリア花酵母:スイカズラ科の花から採取された酵母。マスカットやフレッシュな青リンゴを思わせるみずみずしいアロマと、キレの良い軽快な酸味が特徴。「来楽 純米吟醸 アベリア酵母」などに用いられ、同蔵のフラッグシップとして絶大な人気を誇ります。
・ナデシコ花酵母:可憐なナデシコの花から分離。上品で落ち着きのあるフローラルな芳香と、ふくらみのある柔らかな旨味を酒にもたらします。食中酒としてのバランスが非常に優れており、和食全般と美しく調和します。
花酵母仕込みは、一般的な酵母に比べて発酵管理の難易度が高く、温度管理や醪(もろみ)の経過観察に極めて神経を使います。杜氏の緻密な手作業と熟練の勘があって初めて、酵母のポテンシャルが100%引き出されます。仕込み水には六甲山系の良質な地下水を使用し、兵庫県産山田錦や兵庫北錦といった地元播州産の良質な酒米を惜しみなく使用。伝統技術と先進の酵母学が融合することで、唯一無二の芳醇で清らかな味わいが生まれています。
【スペック比較検証】「来楽」主要ラインナップの特徴と味わいデータ
銘柄ごとに異なる酵母や酒米が使い分けられている「来楽」。その主要なラインナップのスペックと味わいの傾向を一覧表で比較します。
| 商品名 | 原料米/精米歩合 | 使用酵母/アルコール度 | 味わいの特徴・編集部の見解 |
|---|---|---|---|
| 来楽 純米大吟醸 | 兵庫県産山田錦 35%〜50% | 自社選抜酵母 15〜16度 | 気品ある吟醸香とシルクのような滑らかさ。山田錦の豊かなふくらみと研ぎ澄まされた後味が見事に共存する最高峰の1本。贈答用にも最適。 |
| 来楽 純米吟醸 アベリア酵母 | 兵庫県産米 55%〜60% | 東京農大アベリア花酵母 15度 | マスカットのような爽快なアロマと透明感のある酸。白身魚のカルパッチョや塩焼きに抜群の相性を見せる、同蔵屈指のベストセラー。 |
| 来楽 純米生原酒(季節限定) | 兵庫県産山田錦他 60%〜65% | 各種花酵母・協会酵母 17度前後 | しぼりたてならではの微発泡感とダイナミックな米の力強さ。蔵開きや新酒シーズンにしか味わえない、鮮烈なジューシーさが魅力。 |
| 来楽 特別純米酒 | 兵庫北錦・五百万石等 60% | 伝統清酒酵母 15度 | 料理を選ばない万能食中酒。冷酒はもちろん、40度前後のぬる燗にすると米のまろやかな甘みと旨味が引き立ち、杯が心地よく進む。 |

【実態検証】利用者の生の声と現場目線で見えたリアル
日本酒専門のSNSコミュニティやレビューサイト、地酒居酒屋での利用者の声を精査すると、茨木酒造の「来楽」に対する評価には明確な傾向が見て取れます。
インターネット上のリアルな反響として目立つのは、「香りの上品さと食中酒としての飲み疲れのなさ」を称賛する意見です。大手日本酒レビューサイトの投稿では、「花酵母と聞いてもっと香水のような主張の強さを想像していたが、実際に飲んでみると非常に軽やかで、食前酒からメインの料理まで一本で通せる万能さに驚いた」「純米吟醸アベリア酵母は、柑橘をキュッと絞ったような瑞々しい酸があり、脂の乗った魚や天ぷらとの相性が素晴らしい」といった具体的なテイスティング評が多数寄せられています。
一方で、愛好家コミュニティからは「小規模生産蔵であるため、近所の一般的なスーパーや量販店では手に入らない」「新酒時期の無濾過生原酒は人気が高く、特約店でも早期に完売してしまう」といった入手のハードルを指摘する声も散見されます。しかし、この「どこでも買えるわけではない希少性」と「丁寧に造られた本物の味わい」こそが、熱烈なリピーターを生み出す強力な原動力となっています。
一般に知られていない盲点とネットの誤解|「花酵母=甘口で芳香剤っぽい」は本当か?
花酵母仕込みの日本酒に対して、一部のネットユーザーやビギナーの間で根強く存在する誤解があります。それが「花酵母の酒は、花の香水のように甘ったるく、料理に合わないのではないか」という懸念です。
これは明らかな事実誤認です。花酵母とは、花びらそのものを酒に漬け込んで香りを移すものではありません。自然界の花の蜜などに生息している野生酵母の中から、アルコール発酵能力が高く、清酒の醸造に適した優秀な酵母菌を純粋培養したものです。生成される香味成分は、リンゴや洋梨を思わせる「カプロン酸エチル」やバナナ様の「酢酸イソアミル」といった、通常の清酒酵母と同じエステル類が主成分です。
さらに茨木酒造の「来楽」は、瀬戸内の新鮮な魚介類とともに親しまれてきた明石の地酒です。蔵元杜氏は「酒単体で完結するのではなく、料理と合わさって初めて完成する酒」を明確な設計思想として掲げています。そのため、花酵母由来の華やかなトップノートを持ちつつも、糖分を過度に残さず、後味にはキリッとした酸とドライな切れ味を持たせています。決してべたつかないスマートな仕上がりであることこそ、現地で実際に飲用した専門家が一致して口にする事実です。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
客観的なテイスティング結果と造りの特徴を踏まえ、「来楽」を選ぶべき人と別の選択肢を検討すべき人の境界線を明確に提示します。
【おすすめできる人】
・白身魚や魚介類、和食を中心とした食中酒を探している人:明石特有の食文化に寄り添うキレと透明感は、刺身や塩焼き、煮付けの繊細な旨味を最大限に引き立てます。
・フルーティーな香りと軽快な酸味のバランスを好む人:特にアベリア花酵母仕込みは、ワイングラスで香りを楽しみたいモダンな日本酒ファンにうってつけです。
・ストーリー性と個性を兼ね備えた贈答品を求めている人:「論語」に由来するおめでたい銘柄名や、花酵母という話題性は、酒好きの方へのギフトとして高い満足度を誇ります。
【慎重になるべき人】
・どっしりとした重厚な熟成酒やクラシックな山廃・生酛の酸を最優先する人:茨木酒造の酒は端麗かつ洗練されたモダンなスタイルが多いため、濃厚で重いボディを求める方には軽快に感じられる場合があります。
・コストパフォーマンス最優先で大容量の安酒を探している人:全量手造りの小仕込みであるため、紙パック酒や量産型の普通酒のような極端な低価格帯の商品ではありません。
【2026年最新】茨木酒造の現在と蔵開き情報・販売店&アクセスガイド
現在、茨木酒造合名会社は伝統的な酒造りを着実に次代へと繋ぎながら、地元明石との共生と情報発信をさらに強化しています。酒蔵を身近に体感できるスポットとして、多くの来訪者を迎え入れています。
・蔵開き最新情報:毎年2月下旬から3月上旬にかけて開催される「茨木酒造・早春の蔵開き」は、播磨エリアを代表する地酒イベントとして定着しています。普段は立ち入ることのできない蔵内の一部見学や、その場でしか飲めない限定のしぼりたて生原酒・にごり酒の有料試飲販売、地元明石のグルメブースの出店などが行われます。最新の開催日程や入場方法については、毎年1月中旬頃に公式Webサイトおよび公式SNS等で告知されるため、訪問前の事前チェックが必須です。
・販売店・取扱店情報:「来楽」は、明石市内の主要酒販店をはじめ、神戸・大阪を中心とする関西圏の地酒専門店、全国のこだわりの特約店で購入可能です。また、茨木酒造の敷地内にある直売スペースでは、定番酒から季節限定酒まで蔵元直営ならではのラインナップが揃っています。遠方にお住まいの方は、公式オンラインショップや正規特約店の通信販売を利用することで、蔵出しの新鮮な状態の酒を確実に取り寄せることができます。
・蔵元へのアクセス:兵庫県明石市魚住町西岡1375。
公共交通機関を利用する場合、山陽電気鉄道本線「山陽魚住駅」から徒歩約5分、またはJR山陽本線(神戸線)「魚住駅」から徒歩約15分(タクシーで約5分)と、酒蔵としては極めてアクセスに恵まれた立地にあります。車でアクセスする場合は第二神明道路「大久保IC」または「明石西IC」から約10〜15分ですが、試飲を希望される場合は必ず公共交通機関を利用してください。
【茨木酒造合名会社】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:茨木酒造の「来楽」はどこで買えますか?東京など関東でも手に入りますか?
A1:明石市内の酒販店や蔵元直売所のほか、東京や関東圏でもこだわりの地酒を扱う特約店で取り扱いがあります。また、茨木酒造の公式オンラインショップや提携酒販店のECサイトから全国へのお取り寄せが可能です。生酒や季節限定品をお求めの際は、確実な温度管理を行っている正規取扱店からの購入を強く推奨します。
Q2:「花酵母」で醸した日本酒とは具体的にどのような特徴がありますか?
A2:花から分離された酵母を用いて発酵させた日本酒のことで、原料米の旨味に加え、使用する花酵母(アベリアやナデシコなど)ごとに異なる個性的なアロマと心地よい酸味が引き出されます。花の香水のような強い匂いがするわけではなく、みずみずしいフルーツのような上品な香りと爽快な後味が特徴で、和食はもちろん洋食とも好相性を示します。
Q3:茨木酒造の酒蔵見学は通年で受け付けていますか?
A3:酒造期(秋季〜冬季)は徹底した衛生管理と醪の発酵管理が行われているため、日常的な蔵内見学は原則として受け付けていません。ただし、敷地内の直売所での商品購入は通年可能です。蔵の雰囲気を楽しみたい方や造りの現場を体感したい方は、毎年早春に開催される一般向けの「蔵開き」イベントのタイミングに合わせて訪れるのがベストです。
まとめ:手造りの真髄を受け継ぐ明石の誇り、その進化から目が離せない
1848年の創業以来、明石の豊かな風土とともに歩んできた茨木酒造合名会社。9代目蔵元杜氏が率いるその酒造りは、嘉永年間から続く丁寧な手作業の伝統を守りながらも、花酵母という新たな翼を得てかつてない輝きを放っています。
「来楽」という名に込められた、人と人が酒を酌み交わす歓び。その一杯には、瀬戸内の海の幸を慈しみ、飲み手の笑顔を思い浮かべながら米を蒸し、麹を育ててきた蔵人たちのひたむきな情熱が宿っています。日々の食卓を少し特別に彩る一本として、あるいは大切な誰かと言葉を交わすための友として、進化を続ける明石の名門・茨木酒造の美酒をぜひその五感で確かめてみてください。 (出典: 茨木 酒造 合名 会社(Yahoo!ニュース))